グローバル・エンゲージメントで世界を変える!

グローバル・エンゲージメントで世界を変える!
日本のメーカーがアフリカの子供たちの命を救った
元住友化学事業部長がアフリカで事業を立ち上げるまで

PFCでは今年から本格的にグローバル・エンゲージメントに関する研究や研修、情報発信、交流会などに取り組んでいます。グローバル・エンゲージメントの定義は「企業が持続的成長を果たすために、地球的課題について様々なステークホルダーと対話・協働して共創すること」です。PFCでは、社会の健全な発展のため、そして自社の事業の成長のためにも、グローバル・エンゲージメントはこれからの企業が取り組むべき最重要課題のひとつであると考えています。

2015年3月、グローバル・エンゲージメントの考え方を世に広め、その実現に向けた行動を促進することを目的として、ビジネスの第一線で活躍する有志による「グローバル・エンゲージメント・イニシアチブ」が立ち上がりました。これまでも定期的に有志のメンバーが集まり、有識者やアフリカの国の大使などをお招きしながら、地球的課題や日本企業の関わりについて自由に意見交換する会合等を開催してきましたが、2016年からは本格稼働し、まずはサイトのリニューアル等と共に、有志会の会合を公開参加型にすることにしました。

公開型となって第1回目のグローバル・エンゲージメント・イニシアチブ有志会は2016年3月25日に開催されました。ゲストはNPO法人マラリア・ノーモア・ジャパン専務理事の水野達男氏。住友化学株式会社に勤務中に、マラリア予防蚊帳「オリセット®ネット」をアフリカのタンザニアで製造・販売する事業を軌道にのせるまでのお話などを伺いました。

地球的課題としての「蚊」
mizuno_san国連の関係者であれば「オリセット®ネット」を知らない人はいないといっても恐らく過言ではないでしょう。ジョージ・ブッシュ氏がアメリカの大統領だったときに、タンザニアのオリセット®ネットの工場まで足を運んで水野さんたちを励ましてくれたというエピソードからもその注目度が伺えます。それほどに、マラリア予防というのは、地球における最優先課題のひとつなのですが、日本ではさして話題にもなりません。数年前に、デング熱やジカ熱がニュースとなり、蚊による感染症の怖さが少し認識されるようになりましたが、それでも人々の認識は十分ではありません。「マラリアと人類との闘いは4000年以上も前に遡るが、マラリアがハマダラカという蚊によって媒介されるということがわかったのは、ほんの100年前のこと(水野氏)」に驚かされました。

「マラリアの媒介がハマダラカであるということが判明して以来、対策に向けた研究が進み、マラリアは予防と治療が可能な病気になりました。しかし、WHO(国際保健機構)によると、2015年時点で依然として2億1400万人がマラリアにかかり、死者は43.8万人にのぼっています。しかも死亡者の7割近くは5歳未満の子供なのです。」(水野氏)
マラリアの9割はサブサハラ以南のアフリカで発生しており、アフリカの貧困の原因のひとつとなっています。マラリアに対処することは、アフリカの人々の健康を守るためだけでなく、他国への伝染を防止し、アフリカそして地球全体の経済圏のパイを大きくすることにも役立ちます。だから、マラリア対策は地球的課題であり、地球温暖化問題と並ぶ優先事項だと海外では捉えられているのです。そこに企業が貢献できる余地が大きくあります。

CSR活動を収益事業にする
住友化学では、防虫剤が練りこまれた蚊帳であるオリセット®ネットの製造や販売は、元々はCSR活動の一環として行われていました。しかし、その活動を「より拡大しかつ持続可能なものにするために、CSRではなく収益事業として行う」という決断が社内でなされ、2006年に水野氏に白羽の矢が立ったそうです。51w16ougvKL._SX338_BO1,204,203,200_

水野氏は、蚊やマラリアの専門でもなく、アフリカにも行ったことがなかったそうですが、持ち前のバイタリティ、好奇心、チームワークで、事業化に成功します。もちろん、その過程には数々のトラブルや挫折があったそうです。 そうした、水野氏のリーダーとしての活躍や葛藤については、水野氏の新著『人生の折り返し地点で、僕は少しだけ世界を変えたいと思った。――第2の人生 マラリアに挑む 』(英治出版)にも詳しく記されているので、ぜひお読みになってみてください。

ここで、地球的課題解決に取り組みながら、事業としても成り立たせるにはどうしたらよいのか、誰しもが最も悩むこの点について、その肝を、水野氏のお話からまとめてみました。

  •  現地パートナー選び名称未設定 12
    「『誰とするか』は『何をするか』と同じくらい大切(水野氏)」。工場の立ち上げにあたって、自社の理念を共有できるような信頼できる現地企業を合弁のパートナーに選んだ。
  • 現場主義
    水野氏は「誰よりもアフリカに行った(水野氏)」。蚊帳が販売されている現場、使用されている現場を回り、観察し、カスタマーインサイトを得ていった。
  • 流通網の構築
    途上国でものを売るときに必ずネックになるのが流通網。そこで200台のトラックと運転手を自前で持つという選択をした。
  • 信頼関係の構築
    製品の品質管理から、単に「毎朝決まった時間に来る」といったようなことまで、日本では当たり前のことが、なかなか実現できない。水野氏はそのような時、「ばかみたいに無条件に信じ」、「焦らず、諦めず、放っておかない」というスタンスで接し続けたそうだ。下手にアフリカの経験があると「アフリカ人は怠け者だから無理」とはなから諦めてしまうような人もいるという。
  • ユニークさによるブランド力
    防虫蚊帳を売る競合は何社かあるが、製造と研究をアフリカで行っているのは同社のみ。上述のような信頼関係のもと、品質について粘り強く教え、他社にはない高品質な製品を作れるようになった。その結果、現地では「高品質なオリセット®ネット」というブランド力が確立され、競合品よりも高くてもトップシェアを維持している。
  • 多様なステークホルダーの巻き込み
    オリセット®ネットの多くは国連や国際機関、あるいは民間NGOが買い上げ、貧困層に無償配布されている。グローバル・エンゲージメントを実現するためには、このような国連や国際機関との連携は欠かせない。タンザニア政府や現地のNGOと組んで「バウチャープログラム」を作り、貧困層が直接、蚊帳を購入できるようにするなどPPP (Public Private Partnership)のスキームも効果的に活用しており、BOPビジネスの成功のベストプラクティスとして大変参考になる。

こうして、オリセット®ネットは、事業として成長を遂げたのです。

今日、日本企業による優れたグローバル・エンゲージメントの例は極めて限定的です。この事例がより多くの成功例を生み出すことに少しでも役立つことを願っています。そして、PFCはこれからもグローバル・エンゲージメントに関する情報を発信してまいります。

NPO法人マラリア・ノーモア・ジャパンのサイト
グローバル・エンゲージメントのサイトはこちら

◆第2回グローバル・エンゲージメント・イニシアチブ(GEI)有志会◆
日程:5月31日(火)19~21時 (開場18時40分)
テーマ:『スポーツでNGOを超える!~地球的社会課題解決へのスポーツの貢献可能性』
FIFAを初めとしたスポーツ団体で世界中を駆け回り活躍される山崎卓也氏と杉原海太氏をお招きして、スポーツ界とビジネス界によるコラボレーションによって、地球社会、スポーツ団体、そして企業がどう持続可能性を強化できるのかについて参加者の方々と対話しながら考察していきます。
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