資本主義の教養学公開講座「資本主義と女性」レポート

資本主義資本主義の教養学公開講座は、ビジネス現場の経済人から見た、資本主義に対する根源的な疑問について、「資本主義の本質とは何なのか?」 「資本主義というメカニズムは、我々人間の本性に適っているのか?」を、哲学・思想・自然科学・芸術などの幅広い観点から、学界・ビジネス界の叡智が議論する、連続公開講演会です。今回は、第11回の講座の様子をお届けします。
第11回のテーマは「資本主義と女性」。OECD東京センター所長の村上由美子氏と、PFC取締役・ファウンダーの黒田由貴子の対談形式で行われました。
今の資本主義は男性が作った物という前提で考えた時、

  1. なぜ女性は排除されてきたのか?入り込めなかったのか?能力と意識の男女差はあるのか?
  2. 女性の活躍を後押しするのに必要なことは?
  3. 女性が資本主義に参画することで資本主義はどう変わるのか?

といった黒田氏による問いからはじまった講演。
「男女差を語ることは、ジェンダーバイアスの植え付け、ひいては女性の差別につながるということでタブー視されがちだが、この講演では、あえて男女差に着目し、社会的に植えつけられた固定観念がいかにバイアスをもたらし、合理的判断を歪めるかを検証したい」という黒田氏はまず、脳の違いに着目して、もって生まれた男女差を主張する小坂実氏(日本政策研究センター研究部長)等の論考を紹介。
「男女差について、一般化されすぎることは避けなければならないが、これらが小坂氏のいうように先天的なものなのか、後天的に社会によって形成されたものなのかという議論も含め、考えていかなければならない。
ちなみに、男性と女性の脳の作りが違うことはMRI等により解明されつつあるが、実際の原因は社会的環境(後天的)の影響の方が大きいというのが通説だ。」と結んだ。

続く村上氏は、OECDの調査による各国の豊富な比較データを披露。「男女の能力差について国ごとに違いがある」ということが示され、このことからも男女の違いが後天的な要素に起因する部分が多いことが指摘された。
一方で、各国共通の傾向として、子供のうちは、女子のほうが勉強に熱心で数学・科学以外の成績が優秀ということがデータで検証されている。しかし、その数学・科学でも、「自信を持たせることで、数学のパフォーマンスが向上した」というデータも興味深い。「あなたはこの問題を説くことができますよ」という自信をつけてから同じテストをさせることで、男女のギャップが消えたそうだ。

「キャリア志向の女性」の割合についての興味深い数字も紹介された。厚生労働省の調査に拠れば、仕事への意欲・海外就労への希望は、15〜19才では女性の方が強いが、この数字は、25〜29才で肉薄し、30才以降で逆転をするそうだ。
これら、村上氏が提示したさまざまなデータからは、女性の活躍には環境や意識付けが影響することが見て取れた。「女性の活躍を後押しする為には、小さい頃からの教育や、『できる』という自信を持たせることが欠かせないのです(黒田氏)」

「女性が資本主義に参画することで資本主義はどう変わるのか?」という問いに対しては、「就業率があがり、出産年齢時期に就業率が下がる現象もここ数年ほぼなくなったのだが、日本の資本主義のシステムは基本的には変わっていない。これが変わるためには、労働市場の流動性を高め、適材適所で人材プールをマックスに活用でき、労働者がもっているポテンシャルをうまく活用できるような効率的なシステムが必要だ。これができると日本の資本主義のシステムの根本のところがかなり変わるだろう(村上氏)」「最初に紹介した脳科学の研究によれば、たとえば男性の方が攻撃的だという論考もあったのだが、そういった『競争』をベースとした資本主義から、もうちょっと『公共善』的な資本主義を唱える人が増えるかもしれない(黒田氏)」等の意見があった。

第12回は、「経済ジェノサイド」のタイトルで東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授、中山智香子氏をお招きして開催されます。既にキャンセル待ちとなっていますが、興味のある方はこちらをご覧下さい。