講演レポート:あなたの会社のグローバル度は?

2014年11月に、一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)にてPFC代表取締役の松村卓朗が行った講演レポートです。

JUASはIT利活用の向上を促進する団体で、会員数も2700社を越える大規模な組織です。今回の講演では、JUASの「組織力強化研究会」において、前半は“組織開発のアプローチ”についてご紹介し、後半は最近重要性が増している“グローバル組織開発”、ならびに次世代に求められる“グローバルリーダー育成”についてお話させて頂きました。

あなたの会社の「人と組織のグローバル度」は?
近年、日本企業のグローバル化の必要性が声高に叫ばれてきましたが、よくよく考えてみると、生産も営業も購買も、実は日本企業はとっくの昔にグローバル化していると言えるのではないでしょうか。
グローバル化できずに最後に残っている課題とも言えるのが、「人と組織」のグローバル化なのです。
例えば、ある日系企業の幹部14名が集まった場で、「人と組織のグローバル化」について、次のような質問をしたことがあります。(この企業は、海外売上比率が90パーセントを超え、日本を代表するグローバル企業と言われています。)
「Q.以下の各項目は、御社にとってどの程度重要ですか。そして、現在の実現度はどの程度ですか?」
– 海外法人の社員も含めた経営理念の浸透
– 戦略実施や施策のグローバル水平展開
– 海外法人への権限委譲
– 本社幹部職への外国人の登用

重要度と実現度をそれぞれ聞いてみて幹部全員の認識を合わせると、ほとんどすべての項目で、「どれも重要であるが、実現できていない」という結果を示すものになりました。
日本を代表するグローバル企業でさえ、「人と組織」のグローバル化は心もとない状況なのです。

人と組織のグローバル化の進展を放置した状況で、例えば海外の現地法人のオペレーションを続けているのは、決して得策ではありません。
ある日本企業のアジアでの現地スタッフから、下記のような不満が聞かれましたが、こうした声は典型的な反応と言えるのではないでしょうか。

・「同じ肩書きでも、日本人と現地人では、扱いが違う」
・「方向性や目標が伝わってこない」
・「本社からくる情報はあいまいでわかりづらい」
・「自分はどうしたら認められるのか、聞いても教えてくれない」

グローバルマーケットにはどんどん進出していくものの、人や組織の問題は後回し。そんな日本企業の現状が垣間みられます。

グローバル組織開発の難しさ
上述したように、人と組織のグローバル化、すなわち「グローバル組織開発」の必要性が高まっています。グローバル組織における組織開発は、国内での組織開発に比して、考え方やアプローチにおいて、何か特別に異なる点があるわけではありません。ただ、グローバル組織開発を行うにあたっては、次の3つの点で複雑性が増すので、組織開発の難しさも増すということなのです。

C(Cultural=文化面)の複雑性
国も民族も違う人達が集う中で組織開発を進めることになるので、文化面の複雑性が増します。チーム作りも、価値観の浸透も、リーダー育成も、異文化の多様性に配慮して進める必要があります。

S(Structural=構造面)の複雑性
グローバル組織においては、構造面の複雑性が増します。例えば、マトリックス組織になるので、現地の長と機能の長と2人のレポートラインが存在することも少なくありません。指示報告系統や帰属する組織の複雑性を考慮して進める必要があります。

P(Physical=物理面)の複雑性
組織がグローバル化すると、物理面の複雑性が増します。例えば、時差が生じるようになりますし、一同に会すことができなくなり、ミーティングもバーチャルで行う必要が生じ、こうした物理面の複雑性を視野に入れた組織開発の進め方が求められます。

次世代の真のグローバルリーダーとは?
真のグローバル化を進めるためには、グローバル組織開発に加え、真のグローバルリーダーの育成が重要課題と考えています。
PFC では、次世代のグローバルリーダーとして、Global・Innovative・Authenticをあわせもつ「GIAリーダー」の必要性を説き続けています。

Globalなリーダーシップ
当然欧米だけでなく、今や新興国ですらなく、世界人口約45億人を占めるBOP層をも視野に入れた地球全体の世界観を持ち合わせていてはじめて、真にグローバルなリーダーと言えると考えています。

Innovativeなリーダーシップ
技術革新におけるイノベーションだけをイノベーションと考えていると、真にイノベーティブなリーダーシップを発揮できません。
むしろ、世界市場を対象に考えると、例えば「フルーガルイノベーション(お金をかけずに身近なものを使って問題の解決を目指す方法)」の重要性が増しています。
フルーガルイノベーションの例としては、目覚まし時計を利用した体温や血圧などを測定できる装置などがあります。

あるいは「らくだ冷蔵庫」というイノベーションがあります。ソーラーパネルを背負ったラクダで、冷蔵が必要な医薬品やワクチンを運ぶものです。日本企業の技術者達と議論すると、「もっと発電効率のよいソーラーパネルにできる」とか「もっと見てくれのよいデザインにできる」といった発言が出ます。しかし、この「らくだ冷蔵庫」の真のイノベーションは、らくだを引く人を徹底的に訓練していて、ワクチンを打つことができるという点にあると言うと、皆そこまでは考えなかったと言います。技術面でのイノベーションではなく、サービスを真に届けるという点でのイノベーションがグローバル社会では求められます。

いずれも、日本企業が得意とする「性能や機能を追求する」という意味でのイノベーションではないことが注目点です。真に市場に必要なことは何か、真に届けるためにはどうすればよいかを考え抜かなければ生まれなかったイノベーションです。

Authenticなリーダーシップ
多くの企業では、自組織の発展や自分の部下の成長を促せるリーダーシップの育成が図られているのではないでしょうか。そうしたことに留まらず、もっと社会に目を向け、「自組織がその社会(の未来)に対して何ができるのか」を考え抜くリーダーシップの重要性が、これからさらに増すと考えています。
我々はなぜグローバル化を図っていくのでしょうか?「日本市場が縮小しているから、生き残るために海外に出る」というのでは、あまりに自分勝手で、また、決して生き残ってすらいけないでしょう。グローバル社会の為に、われわれがもつ知識や技術が貢献できるから、海外に目を向けるのです。
しかし、このことを根本的に認識できていないリーダーが少なからずいるようです。先日も、あるミャンマー人からこんな話を聞いて私自身悲しくなったことがあります。
「日本人が大挙して視察に押し寄せてきたので、一生懸命ミャンマーの現状について話した。しかし帰り際に彼らの口から出た言葉は「日本の工場は素晴らしいから、是非見に来い」だった。我々が聞きたいのは「あなた方日本企業がミャンマーのために何ができるか」だったのに、そのような話は出てこなかったので失望した。」
グローバルリーダーは、まず、自分自身のグローバル社会への認識と、なぜグローバル化するのかの考え方を見直すことからはじめなければならないのではないでしょうか。

PFCではこういった講演も行っています。興味がおありの方は、pfc@peoplefocus.co.jp までお気軽にお問い合わせください。