【ジャンゴのちょっといい話:田岡純一】ASTD2014

taoka_new今回も前回に引き続き、ワシントンDCで開催されたASTD(American Society for Training& Development)の基調講演の内容をご紹介したいと思います。
※前回の記事はこちら

ちなみに会期中にASTDの会長であるトニー・ビンガム氏から発表があり、ASTDもその名前を”CHANGE”することが発表になりました。

新しい名前は”ATD”です。”Association for Talent Development”の略です。
以前のASTDは”American Society for Training&Development”の略でした。もう組織の在り方がアメリカ社会に特化した内容ではなく、グローバルでの人財開発を考える組織に変わってきてるにも関わらず、ASTDの名称というのはやはりおかしい。ASTDのカンファレンスでも参加者にチェンジの必要性を説いている以上、まずは自分達も”CHANGE”しなければの思いがあったように感じます。

今回のカンファレンスではこのCHANGEという言葉とVUCA(ヴッカ)という言葉が頻繁に出てきました。
VUCAは不安定性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、あいまい性(Ambiguity)の頭文字をつなげた言葉です。現代はまさにこのVUCAの状況であり、この環境下においては色んなCHANGEを起こしていかなければならない。そして何より人財開発に携わる私たち自身もCHANGEを起こしていかなければならないし、同時に組織にCHANGEを起こすチェンジ・エージェントになっていく必要性があるとの強いメッセージが発信されていた印象です。
2回目の基調講演も、そのCHANGEの必要性とそのために何が必要なのかについての内容でしたので少しご紹介します。

スピーカーは、スタンリー・マクリスタル(Stanley Allen McChrystal)将軍、元在アフガニスタンでの反政府活動における戦略の立案及び実践を指揮したり、独自の軍組織におけるコミュニケーション方法を考案し、斬新な対テロ組織を創設したことでも有名。
2010年に退官したのち、2011年にマクリスタルグループを創設し、組織におけるイノベーティブなリーダーシップ実践をミッションに、彼が考案したリーダーシップ手法であるクロス・リードを教えています。またベストセラーとなった“My Share of the Task:A Memoir” の著者です。

マクリスタル氏は自らの軍組織での豊富な経験を基に、危機的な状況において素早く対応し、柔軟に適合して生き残ることができる自己組織化されたチームや組織をつくるためには何が必要かについて事例を交えながら語ってくれました。

(9.11のテロを例にとりあげ)テロリズムの変化が米軍の官僚的組織の基盤を揺るがしたと語り、組織が大きく官僚的になることで保たれれていた秩序や強さがあったが、激しい環境の変化や状況においては、環境に適合できずに、むしろ脆弱性に変わってしまう。
複雑で変化の激しい状況で、成果でチームや組織が生き残っていくためには以下の3点を意識して行動することが大事。

①未来は予測できるという傲慢さを排除する(Predictive Hubris)
予測できない未来もたくさんある。我々はそれを受け容れ適合するしかない。
未来は予測できるという傲慢さを捨てて、現実に適応すること。

②有機的(組織的)な適合性(Organic Adaptation)
危機的な状況発生時に組織的に素早く柔軟に適合するチームづくりが必要。
複雑で危機的な状況においては、関わるメンバーがお互いに信頼し、チームとし て一体感を持った状態でないとミッションは達成できない。小さなチームなら一体 感を持ちやすいが、チームや組織が大きくなると持てなくなる。

③共有化された意識と権限移譲による実践(Shared Consciousness &
Empowered Execution)
大きなチームや組織になった時に、一体感を待ちミッション達成するために必要 なことが、組織的なコミュニケーションを通して情報や意識を共有化することと権 限移譲を促進すること。
権限を委譲することで、決定権を持ったメンバーは、より注意深く行動し、生産性 の高い行動ができるようになる。
アルカイダのリーダーを捕えようとした時、米国政府が官僚的な組織であったた め、組織内の情報共有が上手くいかなかった際に、コミュニケーションをとること でゴールを共有し、意識や情報の共有が図られて問題解決にいたった事例を紹 介。

講演を聞いて私が感じたのは、VUCAの時代においては、危機的な状況に素早く対応するチームづくりが大事。そのチーム作りのカギは組織内のコミュニケーションの活性化(特に組織横断的なコミュニケーションの仕組みの必要性)とエンパワーメントの促進です。
どちらも忙しさを理由に、対応が遅れている組織が多いように思います。変化を素早くキャッチしそれを受け容れ(ADAPT)対応するための組織内コミュニケーションの活性化への取組みとエンパワーメント促進の取組みを強化してみてはいかがでしょう。

大事なのは、いきなりトップマネジメントにその取り組みを委ねるのではなく、まずは自らできるCHANGEを起こすことから始めてみることではないでしょうか。