【サッカーから学ぶ組織開発・人材開発:松村卓朗】第31回 グローバル人材が話すジャパニーズイングリッシュ

matsu_seminar前回に引き続いて、本田選手のACミラン移籍を話題に取り挙げたい。

本田選手は、入団会見をすべて英語で行った。近年、どの企業でも、自社のグローバル化に合わせて英語力の向上に取り組んでいる人は多いが、これぞグローバル人材が話す手本のような英語を披露していた。

入団会見で彼が行っていたのは、決して完璧で流暢な英語を話すことではなかった。文法的に間違った表現も少なからずあった。ただ、完璧なコミュニケーションをとっていた。終始一貫して、 “ジャパニーズイングリッシュ”で堂々と、そして誠実に答えていた。

私自身の英語力は心もとないので、会見の後、ネイティブや、あるいは英語のプロ達の評価はどうか探ってみた。そこには、多くの人達の絶賛の言葉しか見つからなかった。

最も絶賛されていたのは、多少表現があやふやになっても慌てずに、堂々と、そして誠実に答える「姿勢」だった。国際会議での通訳業務で豊富な経験を持つ人は、「あれほどしっかりした受け答えができれば、どんな場面でも英語で対処できる。通じない相手は誰もいない。」と断言していた。たとえ流暢でも、おどおどしていては軽く扱われてしまう。多少文法が間違おうがなまりがあろうが、臆せずにどっしりと構えて話す人は、とても高く評価されるそうだ。

私も、自身が手本とする、昔の上司の英語を思い出した。日本人でもネイティブのような流暢な英語を話す人が多い環境で、私は英語で話す勇気をどんどん失っていったが、彼が転職してきてはじめて英語で話すのを聞いたときの衝撃は忘れられない。グローバル企業を渡り歩いてきたというので、さぞかし流暢な英語かと思いきや、出てきたのは“ジャパニーズイングリッシュ”なのだ。しかし、堂々と、ゆっくりと、伝えたいことを分かり易く話す。流暢な英語を話す人のプレゼンよりも、この人のプレゼンの方に真剣に聞き入るクライアントの姿を目にすることが多かった。帰国子女でもない限り、これから一生かけても流暢に話せるようになることはないと思っていたが、そんな人を目指す必要はないのだ。私は、この人をロールモデルにしようと決した。

本田選手の入団会見は以下だ。少し長くなるが、記録と記憶に残しておきたいので、全文を記す。(出所:スポーツ報知新聞 1月9日号)

Q. 背番号10をつけることになりましたが?

A. When I know that, one of my dreams come true. When I was 12, I wrote “one day I wanted to play at Serie A and I wanted to put No. 10. So I really really for hungry to come here and put No. 10. I was so happy when I know. So I really want to show who I am on the pitch.
10番と聞いたとき夢が叶ったと思った。12歳のとき、「いつか、セリエAでプレイして10番を着たい」と書いた。なので、実現して本当に嬉しい。ピッチの上で10番に値する選手だということを示したい。

Q. なぜACミランが夢だったのですか?

A. When I was young, I watched TV every week and Serie A is most famous league in Japan at that moment. I wanted to come here at first I want to become champion here. After that I’m thinking about Champions League.
小さい頃、テレビで毎週試合を見ていた。セリエAは日本で一番有名なリーグ。ここに来たかったし、まずはここで優勝したい。その次はチャンピオンズリーグだ。

Q. ACミランで一番大事にしたいことは何ですか?

A. I said in the many interviews about this question. For me just I need a football. I don’t mind which city I live. I just need to win the game, and training hard, and good rest. That is important for my life. And I know the club helps me a lot from now.
同じ質問に答えてきたけど、僕にとってサッカーはすべて。どこでプレーしようとかまわない。試合に勝ち、トレーニングを積み、しっかり休む。これが大事なこと。クラブも協力してくれると思う。

Q. 希望のポジションはありますか?

A. I can play every position, but if I can choose I want to play behind striker. I think this is my position.
どのポジションでもやれるけど、選べるならトップ下でやりたい。自分はトップ下の選手だから。

Q. カカ、バロテッリについてどう思いますか?

A. They are I think No.1 players in the world and I am glad to play with them. I want to learn a lot. I think I can learn a lot from them. If we play good we can become champion not about this year but next year.
世界でもNo.1の選手だと思うし、一緒にプレイするのが楽しみ。彼らから学べることも多いと思う。うまく連携できれば、今年は無理でも来年には、優勝できると思う。

Q. イタリアで身につけたいことは何ですか?

A. I feel you expect a lot. So I know I have to show and I have to you satisfy. I think I have to make many goals and many assists. I will do my best and I will give some special things for the team. I will do my best.
期待をすごい感じる。応えるためにはたくさんのゴールとアシストをあげないといけない。ベストを尽くして、チームに何か特別なものを与えたい。ベストを尽くすよ。

Q. 日本ではまるでベッカムのような扱いですが?

A. No. I know my jobs. I have to play well on the pitch. But I like fassion I like to give dreams and brave to the children. So I try to behave how is professional football players. This is who I am.
いや、自分の立場はわかっている。ピッチでいいプレイをすること。ファッションは好きだし、子供たちに夢や勇気を与えたい。できるだけプロ選手としての言動をしていたい。これが自分のスタイルなんです。

Q. 多くのクラブからオファーがあったと思いますが、なぜACミランを選んだのですか?

A. That’s easy. I just asked my little Honda in my heart which club do you want to play. I asked him. He answered “I want to play at AC Milan.”
簡単なこと。心の中の小さな本田に聞いたんだ。そしたら、ミランでプレイしたいと答が返ってきた。

Q. サムライの精神とはどういったものか?

A. I never meet a Samurai. So I don’t know that is true but I think Japanese men is never give up, strong mentality, and we have good disciplin. So I think I have too. So just I want to show that spirit on the pitch.
侍には会ったことがないので.正しいかわからないけど.日本男子は決してあきらめない。強い精神力を持ち、規律正しい。そうしたものは自分も持っていると思う。だから、ピッチでそうした精神を示していきたい。

Q. 長友選手は何と言っていましたか?

A. He said Italian league and Italian fans knows football. If you play bad they shit you immediately. So I care, I remember I have to play well, keep playing. That is my task.
イタリアのファンはサッカーをよく知っているので、いいプレイをしないとすぐに非難されると聞いた。いいプレイを続けることを肝に銘じておきたい。それが自分の仕事だ。

Q.ザッケローニ監督は何と言っていましたか?

A. He advised me Milan is really top club in Italy. He said everything is top. But still you, just beginning, you have to play well and just keep it. That is his advice.
ミランはイタリアでトップクラブ。あらゆる面でトップだと言っていた。最初はいいプレイをし続けることが大事だというのが彼のアドバイスだった。

個人的には、「なぜACミランを選んだか」と聞かれて「心の中の小さな本田に聞いた」というフレーズと、「侍精神とは何か」と問われて「侍には会ったことがない」というフレーズが、とても印象に残っている。

ところで、前回のW杯の得点王でMVPをとったディエゴ・フォルラン選手(ウルグアイ代表)が、Jリーグのセレッソ大阪に加入した。昨日(3月1日)のJリーグの開幕戦では、先発に名を連ねて、随所にワールドクラスのプレイを見せていた。

彼の会見は、本田選手の会見以上に驚いた。全く何もメモを見ないで、日本語で次のように語ったからだ。

「こんばんは。日本の皆様、はじめまして。ディエゴ・フォルランです。
セレッソ大阪で頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします。日本政府、Jリーグの皆様、ここでプレイができる機会をいただき、感謝致します。
以前から日本のファンでした。過去に3回、日本に来たことがあります。素晴らしいおもてなしを受けました。たくさんの希望と夢を持ってきました。去年、チームは4位まで行きました。今年、良い成績を残せるよう、全試合努力します。
どうも、ありがとうございました。おおきに。」

入団が決まってからの数か月で、ここまで日本語をマスターした外国人プレイヤーをはじめて見た。しかも、そのスピーチは単に日本語で行ったというだけではない。旬な「おもてなし」を入れ、「おおきに」で締める。とても粋なものだった。

我々は、グローバル化の荒波でもまれるサッカー選手達から、語学に対する姿勢も大いに学ばなければならない。