インドネシア人に「成長はあなたのためになる」と言っても響かない理由は?

今日は「ワールド・バリューズ・サーベイJohn(WVS)」の話をしましょう。

WVSは、社会科学者が各国のバリューズの変化とその社会や政治への影響を調査したものです。調査は1981年から2013年にわたって100ヶ国以上で行われ、各国の人々の価値観や、それがどのように変化してきたかなどを調査しており、全世界の90%の人々の価値観を反映していると言われています。
WVSは様々な角度からの調査を行っていますが、どれも、様々な示唆を与えてくれます。

例えば、次の図は
・ 縦軸:「社会への宗教の影響度合い」(上に行くほど低い)
・ 横軸:「生存欲求」 vs 「自己実現欲求」の度合い
を国ごとにマッピングしたものです。

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日本は、中央の上部に位置し、「最も宗教の影響度合いが低い社会」と位置付けられています。

この調査結果は日本人にどんな示唆を与えてくれるでしょうか?
こんなケースで考えてみましょう。
インドネシアでは、お祈りのために金曜日の勤務時間中にモスクに行く人がいて、業務に差し支えるので時間を調整できないかと相談したところ、それはできないと言われたそうです。これを「仕事に対する熱意が足りない」「だから現地スタッフとは仕事がしにくい」と切り捨ててはいないでしょうか?

そんな時、このWVSのマッピングを思い出してください。インドネシアは中央より下、すなわち「宗教の影響度合いが高い国」になっています。このことを知っていれば、

  • 日本以外の国では、個人の価値観(バリューズ)の背景にも、宗教が強い影響を及ぼしていることが多い
  •  したがって共に働く外国人の価値観(バリューズ)を理解するにあたり、宗教的・文化的背景に配慮しなければならない
  • 他国の人の価値観や一見理解できないように見える行動も、宗教的規範や考え方が基盤にあるのだと考えることができるようになり、より深く理解し、関わりあうことが可能になる

のです。

また、日本本社の理念やバリューズを海外に浸透させる際のヒントもあります。

一例ですが、横軸の「生存欲求」vs「自己実現欲求」の度合いに注目してみてください。スウェーデンは最も右(すなわち、個人のバリューが、自己実現欲求等に強く結びついている」にあるのに対し、イスラム圏やインドネシアでは「生存欲求」言い換えれば「生活の豊かさ」を重視する傾向があることがわかります。

このことから、例えばあなたの会社のバリューズが「成長」だとして、これをスウェーデン人に伝える場合と、インドネシア人に伝える場合では伝え方を変えたほうがうまくいくことがわかります。

すなわち、スウェーデン人は「自己実現欲求」が強いので、ダイレクトに「あなたの成長が会社やあなたの成功に結びつきます」というように、自分が納得できる、やりがいのある仕事をできるチャンスと語りかければよいのです。

これに対し、インドネシア人に伝えるのであれば、彼らは自分や一族が経済的に豊かな生活をすることを重視しているのですから、「あなたの成長はあなたのためなのですよ」と言っても響きません。「あなたが成長し、より高い目標を達成するとあなたの給料が上がり、あなたの家族や一族も豊かになる。」というように、「生活の豊かさ」と結びつけることで、彼らの納得感をより高めることができるのです。

また、1981年から2007年の間に日本人の価値観が左から右にシフトしたという結果も出ていて、日本人がキャリアを高める上で自己実現を重視する傾向が強まっていることもわかります。(下図参照)

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たしかに私が1991年に日本に初めて来たときと比べてみても、それを肌で感じることができます。もちろん経済環境やグローバライゼーションによる変化もありますが、それを超えた変化を感じるのです。人材紹介会社の広告ひとつとっても「自分に合う仕事を見つけよう」とか「あなたの夢をかなえられる会社」などというフレーズは20年前にはほとんど目にしませんでしたよね。今では「自分が納得できる仕事、自分にぴったりの就職先を見つけよう」「転職は自分のスキルを延ばすチャンス」などといった言葉が一般的になっています。

WVSにはこの他にも様々な調査結果が掲載されています。ぜひ参考になさってみて下さい。