グローバルな組織を作るためのヒント集 (3)「なんで私がこの仕事を?」と言われた時、説明できますか? :John McNulty

あなたならどうしますか?
あなたは海外で営業マネージャーの仕事をしています。部下の外国人に「売上の集計方法を来月からこのように変えるように」と依頼したところ「なぜそうするのか?」「そのことによるメリットは?」「私はこのやり方の方が良いと思うが?」などと矢継ぎ早に質問してきました。今まで日本国内で仕事をしていた時は、そんなことをあらためて質問してくる部下はおらず、誰もが「はいわかりました」と黙って作業を進めたものです。彼に仕事を頼む時、これからいちいちこうやって質問攻めに合い、長々と説明しなければ行けないのかと思うとうんざりしてきました…….

アメリカから来日間もない私が埼玉県庁で働いていた時のことです。上司が私にあるタスクを命じました。私は当然のように「なぜその仕事が必要なのか、なぜ私に依頼されたのか」などを質問しました。するとその上司はムッとして「課として取り組むことになったからだ」と答えました。あとで同僚が「皆の前でああいう質問をしちゃだめだよ。わかりました、って聞いておけばいいんだよ」と教えてくれました。どうやら「質問することが上司に挑戦することで、上司の権威さえ傷つけることになるらしい」と知ったことは、私の大きな驚きでした。
あれから十数年、今の私は、あの上司がムッとした理由を客観的に分析し、彼がどう振る舞うべきだったのかをレクチャーすることができるだけの十分な経験と知識を手にしました。

日本企業が現地法人やパートナーとの協業で悩むテーマを取り上げるこのシリーズ。今回は現地社員と効果的に協業するためのポイントをご紹介します。下記はアメリカ人を想定したヒント集ですが、グローバルに適用する部分も多くあります。ぜひご参考下さい。

私の経験は、「日本人上司の在日外国人に対する振る舞い」の一例ですが、これは場所を置き換えてみれば、「駐在日本人の、ローカルスタッフへの振る舞い」に置き換えることができます。まず、ローカルスタッフに仕事を依頼する時、どのような点に留意すべきかを考えてみましょう。

(1)「上司の指示だから」は通用しない
グローバルビジネスの現場では、指示に従うにあたって、明確・簡潔な理由を求められる場面が多くあります。さらに、命令するのではなく、協議するアプローチが好まれます。現地スタッフは、一般的な日本人社員のような会社への忠誠心を持っているとは限りません。彼らは「自分のキャリアは自分でコントロールするもの」と考えています。「業務が理にかなっているか」「自分がやりたいものであるか」「自分の仕事の一部であるべきものかどうか」などの面から、業務を遂行するか、拒否するかを判断します。実際、ある会社の現地スタッフは「その仕事をやるかどうかは最終的にボクの選択だ。たとえ上司の指示でも、納得ができなければ従えないよ」とはっきり言いました。

無理強いだと言われたら?
また、現地社員が日本人上司の指示を「権限をふりかざした無理強い」と見なし、従うのを拒否する例もあります。理由を説明した後も部下が業務の遂行を拒み、それが社のルールや従うべきプロセスに反し、許されない場合には、あなたの指示に従わないことが、どのような結果を招くかのをはっきりと伝えましょう。

(2)あなたを攻撃している訳ではない
日本人マネージャーは業務に関し、How(「何を」「どのように」するべきか)は詳しく説明しますが、Whyすなわち企業のプロセスやビジネスの方向に関する理由や論理の説明にはあまり時間を費やしません。日本人マネージャーは、「部下が上司の言うことをちゃんと聞いて、言われたことを忠実に行うのは当たり前のことでしょう?」と言いました。確かに国内ではそうかもしれません。しかし、グローバルビジネスの現場ではHowよりWhyの説明が欠かせません。業務を行う理由を客観的かつ部下のパフォーマンスに関連した形で説明することが求められるのです。どのような結果が期待されているのか、どのような利点が生じ、なぜその業務やプロセスが現地の顧客にメリットがあるのか。あなたはこれらを説明できるでしょうか?

攻撃されている訳ではない
業務の理由や論理をしつこく問われると、「非難されている」と感じる日本人は少なくありません。しかし彼らの質問は上司への個人攻撃ではないのです。部下が上司を見下しているということでももちろんありません。そのアイディアややり方が理にかなっているか、効果的であり、試みる価値があるのかどうかを、彼らなりに理解しようとしているのです。業務や指示の理由を、現地スタッフが納得できる形で説明できるよう、準備しておくことが欠かせません。
例えばある部下を新しいプロジェクトの責任者にする際、それが望ましい仕事であり、企業戦略や当人の職務内容にどのように関連しているか、また彼らのキャリア・ゴールにどのように役立つかを明確に説明できるように、きちんと準備しておきましょう。

図1

(3)フェアで、具体的なフィードバックを頻繁に
「上司からどのように見られていて、自分のパフォーマンスが公平で正確に認められているかどうかは、すごく気になるよ。」これも現地スタッフの声です。あなたが常にフェアな判断をすることを示せば現地社員は、「この上司は信用できる」と考えます。良い点を認めてフィードバックし、彼(彼女)を評価していることを伝えましょう。同時に建設的なフィードバックもして改善できる点は何かを伝え、彼(彼女)が新しいスキルを学び、労働市場における自分の価値を高めていると感じられるよう、サポートすることが必要です。その際、具体的な業務上の例を挙げ、それがどのように効果を上げているか、またはそうではないのかを示し、会社への影響だけではなく、個人のキャリアとゴールにどのように影響するのかを示すようにしましょう。