グローバルな組織を作るためのヒント集 (2)日本本社のバリューを現地に浸透させるには? :John McNulty

日本企業が現地法人やパートナーとの協業で悩むテーマの一つが、「本社のバリュー(価値観)やビジョン、考え方をどうワールドワイドに広げるか」です。(「バリューとは、会社が重視する価値観、企業理念、企業哲学などのことを指します。」
PFCでは、グローバルな人材開発、組織開発の支援にあたっては国内でのサービス同様、5つの 要素(チーム、チェンジ、リーダーシップ、ダイバーシティ、バリュー) の観点からのご提案を行っていますが、今回はこの中から「バリュー」を取り上げ、バリュー浸透に必要なポイントについてPFCアジアパシフィク代表取締役のジョン・マクナルティがご紹介します。

1. バリューを、全社共通文化として説明する
自社に「全社共通の文化」があることを強調します。これは、国籍・民族・宗教や人種に関わりのないものです。バリューは、日本人社員だけを対象にした形で表現されたり、定義付けされるべきではありません。そうではなく、全社で統一された文化を持つことによってもたらされる利点を、全世界の社員、ひいては顧客やステークホルダーに対し、根拠と理論を用いて説明してください。海外の社員が「自分もこの会社の内部の人間である。」という意識を持ち、バリューの利点を認めることで、いっそう業務に打ち込み、会社への愛着が増すはずです。

2. リーダーを巻き込む
企業のリーダー及び全レベルのマネージャーがバリューを体現することが重要です。社員は、リーダーやマネージャーの行動やコミュニケーションを通して、自分たちに期待される行動や自分たちを職場での成功に導く行動を理解するのです。単にバリューを語るだけでは充分ではありません。全社を対象とし、全世界の社員をまとめるバリューを浸透させるためには、リーダーやマネージャーが時間やリソースを費やすことが必要なのです。

1)バリュー浸透がビジネス成果をもたらすことへの確信を持つ
全リーダーが、責任をもってこれを実行するためには、バリューの世界的な浸透が下記のような成果をもたらし、これによってビジネスが強化され、利益率が向上することを心に留めましょう。

– 新しく買収した海外事業の統合を助ける
– 企業競争力を高める
– 優秀な人材をつなぎとめる
– 意思決定力と事業パフォーマンスを世界的に高める

2)バリューを伝える日本人リーダーを育成する
日本人リーダー、マネジャーに教育・研修の機会を提供します。長らく日本企業の階層システムや、言語に依存しないハイコンテクストの企業文化に浸かってきた日本人マネジャーには、各国の社員にバリューを説明したり、共に検討したり、また実際の行動をコーチするのは難しいことかもしれないからです。海外オフィスに赴任する日本人マネージャーに対しては、赴任前にこれらのスキルを習得してもらいましょう。

3. バリューがどのように結果に繋がるかを示す
バリューがどのようにビジネスの成功に繋がってゆくのか、社員に理解させましょう。具体的な例やケース・スタディーを用い、まず海外拠点の日本人マネージャーに、「企業ミッション・ビジョン・目標や戦略」と、「バリュー」との関係を理解してもらいます。日本人マネージャーは、「海外におけるビジネス戦略が、全社的なバリューに基づいて実行された場合、市場における自社の競合性をどのように高めることができるのか」について現地スタッフを納得させられなければなりません。

4. シンプルな言葉で表す
企業は独自の信条、哲学、バリュー、企業アイデンティティーやブランド・メッセージなどを有しています。これらを必要最低限に凝縮したキーワード、あるいは自社の中で国を超えて最優先されているような考え方をシンプルな言葉にして示します。長い文章や哲学的な文章は、翻訳されると、真意が失われることがあります。世界に広がる社員は、外国語の習得レベルや、人生経験・ビジネス経験も様々です。伝えたい概念が受け入れられ、理解されることが重要なのですから、シンプルを心がけましょう。メッセージの明確化・簡略化ができたら、次に、リーダー自身の経験を用い、自分の言葉で、自分自身とバリューとの関係を説明し、リーダーシップを示してもらいます。

5. 個人のバリューと企業バリューを関連付ける
研修、コーチング、あるいは日々の会話を通し、リーダー個人のバリューが、職場でどのように体現できるのか、考えてもらいます。1、2点で良いのです。社員の個人レベルのバリューが、企業バリューの主要部分とどのように共鳴するのか、リンクする点が認識できるよう、サポートしてあげましょう。

6. 研修を利用して企業バリューを世界的に浸透させる
各国の社員が企業バリューに賛同し、企業バリューの追求に責任を持つようになっても、実行のためのスキルが不十分な場合があります。研修プログラムがあれば、リーダーやマネジャーが、社員と企業バリューについて話し合い、それを浸透させることができます。また研修の場で、社員が企業バリューを実践するためのスキルを獲得し、演習を行うこともできます。研修は、先進国市場と比べて比較的スキルレベルの低い傾向にある、発展途上国市場において、特に重要です。また、研修プログラムで共通の経験をし、共にスキル取得に励むことによって、社員同士に一体感が生まれる場合があります。共通の経験・スキル・演習が、パワフルな「共通言語」となり、多様なバックグランウンドを持ち、地理的に離れた社員同士に一体感をもたらして、より効果的に業務が遂行できるようになるのです。

7. 非日本人マネジャーのリーダーシップを育成する
現地従業員は、日本企業にとって不可欠で、貴重なリソースです。彼らのスキルやリーダーシップの可能性を育成・奨励し、それを評価することが欠かせません。コーチングなどを通し、彼らが企業のロールモデルとなり、バリュー実践の先導者となるよう、育成しましょう。彼らは本社と現地オフィスの橋渡しとなり、全社的なバリューを一貫して体現し、現地で実践し、ビジネスに有効に生かせるようバランスを取るなど重要な役割を担っているのです。

 

「自分達の職場では、自分達が内部の人間として受け入れられている」という意識が現地の社員になければ、われわれがどんなにバリューの重要性を強調しても、真剣味に欠けた、うわべだけのものと見なされてしまいます。「日本のの本社が変化したくないからやり方を押し付けている」と悪く受け取られる場合さえあるかもしれません。真にグローバルな企業となるためには、システムや構造の変化と、企業バリューを世界的に浸透させる努力を並行して行うことが成功の鍵なのです。