GIAリーダーの旅(松村卓朗)第1章:スリランカに行く前のワークショップでの、途上国ビジネスの先駆者からのメッセージ

*GIAリーダー・プログラムについては末尾をご覧ください。

なぜGIAリーダー・プログラムに参加したか
PFCには、グローバルな経験と知見を豊富に有し、グローバルに活躍しているバイリンガルのコンサルタントやスタッフが多く属している。しかし、多くの日本企業がそうであるように、「社員全員が当然のようにグローバルに活躍している」という状況にはまだない。
しかし、真に組織がグローバル化するというのは、例えば「グローバルの仕事はあの人がやるもの」といった特別意識や、「英語ができないからこの仕事は自分には関係ない」といった引け目や臆面がなくなり、通常の仕事の中にグローバルに関わることがごくごく普通に入り込んで、誰もが自然に関わっているといった状況のはずだ。多くの企業のグローバル化推進を支援するにあたって、PFC自体が先んじてそのような組織になることは必須のことであり、我々自身も「内なるグローバル化(即ち、PFCのグローバル化)」を中期の重要なテーマに掲げている。その中で、代表である私自身もグローバルに展開されるプログラムに当たり前のように率先して関わり、私自身のリーダーシップ開発の機会にしたいとも感じて、GIAリーダー・プログラムに手を挙げて自ら参加することに決めた。

現地の方との交流

プログラムの概要
このプログラムは、スリランカでの視察や体験行程がメインではあるが、スリランカに行っている間だけがプログラムではない。行く前のワークショップを中心としたフェーズ1、スリランカを旅する2週間のフェーズ2、日本に戻ってきてから成果をまとめるフェーズ3の、3フェーズに分かれている。

フェーズ1では、5月~6月の2ヶ月の間に、都合4回・4日間のワークショップセッションを持った。そこでは、
・ BOP・新興国市場におけるビジネスの課題と可能性の考察
・ BOP・新興国ビジネスの取組み実例やリバース・イノベーション事例からの学び
・ U理論とシステム思考によるオーセンティック・リーダーシップ開発
・ 異文化コミュニケーションのトレーニング
といったセッションを通じて、新興国を多面的に理解する見方を得たり、地球社会問題についての見識を広げたり、GIAリーダーに求められる発想や考え方のベースを習得したりした。

マザーハウス山崎大祐副社長から学ぶ
この稿では、その中のワークショップを1つ紹介したい。途上国ビジネスの実例から学ぶ目的のワークショップで、メイドイン・バングラディシュのバッグを作っているマザーハウスの副社長、山崎大祐さんに来ていただいた。マザーハウスは、代表の山口恵理子さんがはじめて訪れたバングラデシュでストリートチルドレン達を目の当たりにして、「ビジネスで何とかこの国をよくできないか?」と考えたのがきっかけで生まれた企業だ。「途上国から世界に通用するブランドをつくる」という理念を抱き24歳で起業し、バングラデシュで製造したジュート(麻)のバッグがヨーロッパや日本の一流ブランドと肩を並べて百貨店でも販売されるまでになっている。マスコミでも取り上げられることが多く、私も話を聞くのをとても楽しみにしていた。
山崎さんは1980年生まれということだからまだ32歳の、若さがゆえのバイタリティや行動力が漲っていながら、若くとも途上国でのビジネス経験と苦労を数多く経てきて、しっかりと物事を考え抜く思慮深さも併せ持った人という印象を持った。
話しの中では、委託工場ではなく自社工場にこだわり、現地の雇用にもしっかり取り組んでいることにいたく感銘を受けた。「最初は委託工場に行って生産管理をしていたが、やっぱりモノを作っているうちに、委託工場ではできることがすごく限られていることに気づいた。本当にいいものを作ろうと思ったら、いい労働環境を整え、僕らもコミットしなければ当然工員達も本気を出してくれないから。」と言う。給与は大体現地の一般給与の倍のレベルで、年金や医療保険などもすべて完備、ランチの無償提供や企業ローンまで設けているという。モノづくりなど全くしたことがなかった人達が、日本の“モノづくり”を、その環境までバングラデシュに持ち込んで再現しているというのだ。

途上国ビジネスの先駆者からのメッセージ
自身の体験談を一通り話し終わった後、彼は「想像してみてください。途上国でビジネスをやっていて、“おそらく私達が苦労したであろう”と思うことを挙げてみてください。」と言った。私達は、例えば、「持ち逃げや情報漏えい」「日本品質の理解浸透の仕方」「文字が読めない従業員とのコミュニケーション」「従業員間での宗教対立」「法人設立時の役人からの賄賂要求」等々、多分に想像を交えて挙げていったが、山崎さんは、「挙がったものは、ほとんどすべて経験済み」と言って、これらのすべてに、それぞれどうやって乗り越えたかを、具体的にエピソードを交えながら答えてくれた。
例えば、宗教の話では、「昔からアングロサクソン系の会社では宗教の話はタブーと言われて避けるべきものとされてきたが、最近はエリート層は宗教の違いなどの議論ができて当然というようになってきている。バングラデシュでも宗教理解が進むことは先進的な組織という考え方を共有していった」など、興味深い話がどんどん展開された。ちなみにマザーハウスでは、7月はラマダンで30%生産性が落ちるが、しかしそれは予め分かっているのだからいくらでも対策は打てる、大した問題ではないと言っていた。

また、最も苦労したことの1つに、自社工場を立ち上げたはよいが、「“これでは日本人の求める品質に合わない”といくら言っても分かってくれなかったこと」を挙げていた。しかし、日本からのお客様が現地の工場見学に訪れるようになったことがきっかけで、現地の品質が格段に変わったと言う。「自分達が品質を作るんだ」という意識が生まれ、「何のためにモノを作っているのか」ということを皆が分かるようになり、「お客様に満足してもらう商品を作らなきゃ」と一生懸命になったという。
我々先進国で暮らす人間にとって、今や途上国の経済がなければ成り立たないくらいに途上国に生産を頼っているのに、モノが「どこでどのように作られているのか」を知っている人は少ない、というのが問題意識の根本にあるという。彼の頭の中には、「途上国対先進国」という構図ではなく、あくまで「生産地と消費地」という構図が大きく描かれていて、これを近づけようとすることにエネルギーを注いでいるようだ。「従来の製造小売では、商品を作るサイドをお客様サイドに近づけていくことは意識されていて、例えば、需要予測数値を元に生産ラインを変えたりはする。でも、生産のクオリティを上げるために、作り手にお客様の顔を直接見せることまではやっていなかったと思う、僕達はそれをやることの意味の大きさに気づいたのだ」という話は、とても印象に残った。
山崎さんからは、途上国ビジネスの先駆者からのメッセージをたくさんもらった。

フェーズ1のワークショップのすべてをここで紹介することはできないが、一言で言えば、GIAのキーコンセプトである、グローバル・イノベーティブ・オーセンティックに関して、肝となる考え方を学んだり、問題意識を喚起された2ヶ月だった。
いよいよ、次回はスリランカに向かう。スリランカでのフェーズ2で、自ら見聞きし体験したことを順に綴っていきたい。

著者、スリランカのテレビに出演?

<GIAリーダー・プログラムのご紹介>

GIAリーダー・プログラムは、新興国での体験学習を含めた、新世紀のリーダーシップ開発プログラムです。次の3つの資質を兼ね備えた、次世代リーダーを育成することを目指します。

G(グローバル):新興国の躍動を体感することにより、内向きになりがちな日本人の視座を、地球規模の世界観に基づくようにする
I(イノベーティブ):新興国市場のニーズに応えることにより、近年台頭するリバースイノベーションの発想と戦略を学ぶ
A(オーセンティック):社会問題の解決に取り組むことにより、自分自身の使命や価値観を見出し、リーダーとしての人間力を高める

http://www.peoplefocus.co.jp/seminar/GIA3/index.html