経営層を交えての対話の価値

日々、ご担当者と膝を突き合わせ、人材育成に関する意見交換をし、研修やワークショップ等様々な活動の設計や実施をお手伝いする中で、ご担当者から
「そもそも会社の方向性が不明確なことが問題だ」
という声を聞くことが少なからずあります。そのような時、我々は経営層の方との意見交換の場の設定をお願いしています。

しかし、経営層の方にお会いすると「これだけ方向性を打ち出しているのに、社員が動かないのが問題だ」とおっしゃいます。さらにご自身の考えを大いに語った後、「なぜこのような考えを(社内の皆は)分かってくれないのかな」とぼそりとおっしゃったりします。視座も、見えているものも、責任も異なるので、経営層と考えに隔たりが生じるのは当然といえば当然と思います。

ただ、経営層の方からこのような言葉を引き出すことができた時は、下記のような状況であり、内部のコミュニケーションを大いに促進させる可能性があります。我々のような外部の者が率直に意見具申することが有意義な状況でもあります。
1)(経営者の想いが)何としてでも伝えたい「重要な考え」であることが確認できた状況
2)何とか伝えたいが伝わらない現実に目を向け、「どうしたらよいか」を思案しているため大いに聴く耳を持つ状況
3)なぜ伝わらないかを「周囲が言えていない」状況(言えていない理由は様々)

先日もある会社で、部長層が集まっての戦略策定ワークショップ実施前の最終的な詰めの場で、専務との対話の場を持ちました。そのミーティングで、
「なぜこの方向性を社内の皆はわかってくれないのかな」
という言葉がありました。
「これだけ方向性を打ち出しているのに、具体的な動きが起きない」ことに業を煮やし、「経営層の危機感が伝わっていないことにさらに危機意識を抱いている」
ということでした。

話を聞いて我々は、経験からも次のような可能性があると感じ、率直にこう伝えました。
-社員は、専務が言っている方向性は理解しているが、今と何をどう変えるかが明確でないから、変化が生じない
-社員はその方向性に向かう気持ちはあるが、達成までのスピード感のイメージに専務とギャップがあるから、現在の行動に現われない
-専務が伝わっていない危機感を伝えれば伝えるほど、社員は理解できないと思われている自分自身に負い目に感じ、専務とのコミュニケーションを避けるという悪循環に陥っている

対話の中で、専務の口から「私のメッセージの出し方が悪い、あるいは足りてないのかもしれないな」という言葉も出たので、予定していた戦略策定のワークショップはメニューを変更し、専務に来てもらって、まず会社の方向性に対する対話セッションを持つことから始めることにしました。我々の指摘は仮説にすぎないので、直接対話をしてもらって、専務に「なぜ伝わっていないか」「どうすれば伝わるのか」を肌感覚で掴み取ってもらうことが何より重要と考えたからです。その専務は、セッションの意味を十分に理解してくれましたので、実際の対話セッションでは、「今と何が違うのか」や「変革スピードイメージ」が詳しく伝わるように対話を進めてくれました。

PFCではこれからも、積極的に経営層の方々との意見交換の機会を設け、外部からの視点や情報や知見を提供することに加え、内部のコミュニケーションの促進に大いに一役買えるような役割を果たしていこうと考えています。 組織開発・人材開発に携わる皆さんには、我々のような外部を交えた経営層との対話の場を、効果的に活用していただければと思います。