【山田奈緒子】多様性を強みに変えるチームコミュニケーション-経営統合の葛藤を克服 異文化に遭遇し自己変革(3-2)

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このコラムは、山田奈緒子が日経情報ストラテジー2009年7月号から12号に掲載した記事をリライトしたもので、性別、文化、雇用形態等、様々なダイバーシティについて考察しています。
日本は、女性活用ひとつとっても、ダイバーシティ後進国です。女性がこれほどまでに活躍してないのは先進国の中で日本だけ。先進国以外でも女性の活躍はどんどん進んでおり、日本の国際的な競争力低下にも関わってくる問題です。ダイバーシティ推進は、企業の競争力を高めるだけでなく、少子高齢化の中で国家存続の問題への解決策のひとつにもなりえる切り札なのです。
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経営統合の葛藤を克服 異文化に遭遇し自己変革

3-2 理性だけでは納得できない
情報機器メーカーで人事部門の管理職を務めるH氏の事例を紹介しよう。長い伝統を持つA社とベンチャーとしてスタートしたB社が合併したメーカーで、合併後の存続企業はA社、H氏はB社の出身だ。
ヒエラルキーがはっきりしたA社とフラットな組織で自由闊達な雰囲気のB社とでは、組織風土に大きな差があった。実際に組織を一緒にするまでの間、A社の経営トップは技術開発の組織と業務プロセスを一つにするべく、開発部門のリーダーやH氏など人事担当者を交えて定期的にミーティングの場を設けた。双方の開発プロセスを洗い出し、統合後のプロセスを策定しつつ、文化のすり合わせを行うのが目的だった。
このフェーズは本来、意識の解凍を促進するものとなり得るはずだった。相手の仕事のプロセスを知ることで、これまで「当たり前」としていた自分たちのやり方とは異なる選択肢があることに気づけるからだ。しかし、「表面的な話に終始して、議論が前に進んだり、深まったりしなかった」とH氏は言う。
解凍フェーズでは、相手の話を傾聴し、立場を理解して共感する姿勢が必要とされるが、A社側には「存続会社のやり方に合わせるべきだ」という潜在意識があり、B社側はその意図を感じ取って反発を感じていた。
正式に経営統合した後、旧A社と旧B社の社員が実際に同じ職場で仕事をするようになると、H氏は徐々に融合が始まったのを感じるようになった。顔を突き合わせて仕事をすると、組織文化を頭ではなく、体で感じることができる。相手側の文化を評価・批判するより、共感し、理解しようとする志向が高まっていったのだという。
たとえば旧A社では意思決定するのは管理職の役割とされており、報告や判断を仰ぐための書類作成や管理業務が多かった。統合前「官僚的で融通のきかないものだ」と感じていた旧B社メンバーも、同じ職場で働くことで、それが「意思決定における納得感を高めるうえで有効である」と理解できるようになった。「会議の準備を十分に行って、議論を重ねて結論を出す。確かに時間はかかるが、いったん納得するとメンバー全員が強い一体感をもって実行に移していることが分かった」とH氏は話す。
B社のメンバーは、個々人が強い熱意を持ち、会議の席でも思ったことをどんどん発言していた。しかし、時として個人批判や無責任な発言が増えたり、会議で合意していない行動を社員が勝手にとったりすることもあった。仕事を共にすることで、それぞれの組織文化のメリットとデメリットを中立的に感じ取れるようになった。遭遇と解凍のフェーズが同時に起こったといえるだろう。