目指せグローバル才女!薫子の「飛んだ人生」スタイルスイッチングについて

昨日、一ヶ月の日本出張を終えてサンフランシスコに戻ってきた。
一カ月おきに東京(横浜)とサンフランシスコを往復する生活を始めて、もう6年以上になる。毎月スーツケースをパッキングして10時間のフライトに乗る生活をしていると言うと、「大変ですね。疲れませんか?」と同情のまなざしを送ってくる人達と「日本とサンフランシスコの両方に住めるなんていいなぁ」と憧れのまなざしを送ってくる人達と、反応が二つに分かれる。その反応、両方とも正解だ。
日本とアメリカで交互に生活するライフスタイルは、確かに大変で疲れるけれど、刺激的で魅力的でもある。
ご存知のとおり、日本とアメリカは国民性がかなり異なる。集団の和を尊ぶ日本に対して、個人の権利、利益が最優先するアメリカ。行間を読む間接的なコミュニケーションスタイルをとる日本に対して、直接的に、声に出して主張しなければ通じない、言ったもの勝ちのアメリカ。上下関係、礼儀作法を重んじる日本に対して、インフォーマルで形式ばらないことに価値をおくアメリカ。謙遜の美学が存在する日本に対して、自己アピールが大切なアメリカ。日本では日本語で考えて日本語でコミュニケーションをとるが、アメリカでは英語で考えて英語でコミュニケ
ーションをとる。
このような両極端の国を毎月行ったり来たりしていると、不思議な感覚が生まれてくる。
自分の人生は一つではなく、二つの異なる人生を一ヶ月ごとに生きているような感覚だ。自分自身も一人の人間ではなく、日本にいるときの自分とアメリカにいるときの自分は別人格で、二人の人間が二つの人生を交互に生きているような感覚が生まれてくる。そして、より高度な「自分」という存在が、「私は今、二つの人生を生きているように感じているな」と自覚することによって、二つの人生、二つの人格が統合され、一人の人間の一つの人生として成り立っている、という感覚だ。
言葉で説明し切れないところもあるが、この感覚はなかなか面白い。このコラムでも随時、アメリカと日本で交互に生活するライフスタイルから生まれる感覚や気づきを紹介していきたいと思う。今回は「スタイルスイッチング」について。
日本とアメリカのように、極端に国民性が違う国で、それぞれうまくやっていくためには、「スタイルスイッチング」というスキル、つまり自分のスタイルを状況に応じて変えていくことができるスキルが不可欠だ。イメージで言うと、


自分の中にボリュームを調整するスイッチがあって、それを上げたり下げたりする感じ。異文化ビジネススキルを扱う研修では、このスタイルスイッチングを適切に行えるための様々なコンセプトを紹介し、スキルを練習することになる。
ここで「信用構築」を例に取ってみよう。
日本でもアメリカでも、研修の場で受講生から講師として信用してもらうことは不可欠であるが、その信用を構築するスタイルが日本とアメリカで異なってくる。
アメリカは個が強く、自己アピールが大切な国である。そこで、日本からアメリカに向かう場合は、自分の中の「Assertiveness」(自己主張)のスイッチのボリュームを徐々に上げていく。そして、アメリカのクライアントで研修を行う場合は、研修の最初の自己紹介で、自分がいかに有能でこの研修の講師としてふさわしいかを、自分自身でアピールしなければならない。
一方、日本には、集団の和を重んじ、謙遜するという文化がある。そこで、アメリカから日本に向かう場合は、自分の中の「Assertiveness」スイッチのボリュームを下げ、代わりに「礼儀正しさ」「謙遜」のボリュームを上げていく。そして、日本のクライアントで研修を行う場合は、クライアントの人事から私のことを紹介してもらい、自分自身の経歴を自らアピールすることはしない。
このスタイルスイッチング、最初は意識してボリュームの上げ下げを行うのだが、そのうち無意識にできるようになってくる。そうなってくると、無意識のうちに言動が変わり、二つの人格を使い分けているような感覚が生まれてくる。異なるスタイルを振り子のように行ったり来たりしている海外駐在員の中には「本当の自分が誰だかわからなくなってしまった」というアイデンティティクライシスに陥る人もいる。そういう人にコーチングを行うのも私の仕事なのだが、アドバイスは一つ。「両方ともあなた自身、本当の自分なんですよ」。
自己アピールを巧みに行えるあなたも、謙遜して言葉少ないあなたも、あなた自身の様々な側面が、異文化という土壌の中で育まれ芽を出してきただけ。異文化という多様性に満ちた土壌は、スタイルスイッチングのスキルを培い、自分の中の多様性を引き出して育むのに格好の環境なのである。