【山田奈緒子】多様性を強みに変えるチームコミュニケーション-経営統合の葛藤を克服 異文化に遭遇し自己変革(3-1)

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このコラムは、山田奈緒子が日経情報ストラテジー2009年7月号から12号に掲載した記事をリライトしたもので、性別、文化、雇用形態等、様々なダイバーシティについて考察しています。
日本は、女性活用ひとつとっても、ダイバーシティ後進国です。女性がこれほどまでに活躍してないのは先進国の中で日本だけ。先進国以外でも女性の活躍はどんどん進んでおり、日本の国際的な競争力低下にも関わってくる問題です。ダイバーシティ推進は、企業の競争力を高めるだけでなく、少子高齢化の中で国家存続の問題への解決策のひとつにもなりえる切り札なのです。
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経営統合の葛藤を克服 異文化に遭遇し自己変革

企業買収や経営統合、いわゆるM&Aは日本企業にとっても身近なものとなった。企業が事業の集中と選択を進める中、M&Aは今後も積極的に行われていくと予想される。
しかし、期待通りの成果を収めるとは限らない。M&Aを実施した企業のうち、8割以上の目標を達成した企業は3割弱にとどまる、という調査結果がある(デロイトトーマツコンサルティング2007年)。成功の要因として、ターゲット先の選定や経営トップのリーダーシップについで挙げられたのが、統合後の取り組み、特に合併後の風土統合である。

3-1 「解凍」「遭遇」「順応」のステップを踏む
2社による経営統合の場合、一方の組織文化に他方が合わせるか、全く新しい組織文化を創造するかという選択肢がある。いずれの場合も、組織文化を浸透させる上では、戦略的なデザインと経営による介入が必要だ。意図的な浸透活動なしに、文化が自然に融合することはあり得ない。
それをよく理解していたのが米ゼネラル・エレクトリック(GE)だ。ビジョンやバリューを重視した経営の背景には、1990年代の積極的な買収がある。買収直後から何週間にも及ぶ文化浸透プログラムを実施し、被買収企業のマネジャーたちの意識と行動をGEバリューへと変革した。そうした取り組みを経てこそ、買収によるシナジー創出が実現されると考えていたからだ。
文化浸透をデザインし、適切に介入するのに理解しておく必要があるのが、「解凍」「遭遇」「順応」「自己変革」の4段階のステップだ。M&Aを実施した企業の依頼で、文化浸透のためのワークショップを開催することも多いが、まず、「解凍」のステップとして、これまでの組織文化はどのようなものであったかを、ポジティブ、ネガティブな面の双方をしっかり話し合って表出化する。この時、企業文化だけでなく、社員個人の持つ価値観も引き出して、個人のバリューに照らした組織文化を議論しておく。
 
次に「遭遇」のステップで、新たな文化がどういうものなのかを具体化していく。たとえばその文化を体現している社員に、自らの体験を語ってもらったり、組織文化を端的に示す事例を4コマ漫画などで表現したりというセッションを行う。そして語られた体験や事例について、どう感じたかを参加者同士でディスカッションしてもらう。
解凍や遭遇のフェーズでは、心理的な抵抗感や葛藤が表れやすい。新しい文化に対して「自分は納得できない」「これまでの考え方が間違っているとは思えない」と反感をむき出しにする参加者もいる。こうした感情的な側面の噴出を抑えるのではなく、むしろ解放して、自らの気持ちに向き合ってもらうことが重要だ。
 
ワークショップでこれらのステップを踏んだうえで、実際の仕事を通じて、「順応」、「自己変革」を起こしていく。このフェーズでは、1対1のコーチングセッションなどを定期的に設けて、行動や心境を振り返ることも有効になる。