【山田奈緒子】多様性を強みに変えるチームコミュニケーション-健全な競争心を誘発する

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このコラムは、山田奈緒子が日経情報ストラテジー2009年7月号から12号に掲載した記事をリライトしたもので、性別、文化、雇用形態等、様々なダイバーシティについて考察しています。
日本は、女性活用ひとつとっても、ダイバーシティ後進国です。女性がこれほどまでに活躍してないのは先進国の中で日本だけ。先進国以外でも女性の活躍はどんどん進んでおり、日本の国際的な競争力低下にも関わってくる問題です。ダイバーシティ推進は、企業の競争力を高めるだけでなく、少子高齢化の中で国家存続の問題への解決策のひとつにもなりえる切り札なのです。
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 第2の事例はスポーツ施設運営会社である。多店舗展開を成長の源泉とする企業では、アルバイトや契約社員が店長を勤めるケースが少なくない。この会社でもスポーツ施設のスタッフの殆どが非正規社員であり、その中から店長を登用していた。人件費の抑制に加え、多くが元スポーツ選手であるスタッフを統率する上で、店長もアスリートであるほうが尊敬と親愛を勝ち取りやすいと判断してのことだった。
 
 銀行とは異なり、待遇面でのインセンティブがあり、モチベーション向上には効果がありそうだが、実際には「なぜ自分が」と戸惑い「そんな責任の重い役職には就きたくない」と固辞したり、モチベーションが下がってしまったりする例が続出した。
 店長に抜擢されたものの、その役割に納得できなかったことに起因した現象であった。
多くがスポーツ選手を目指し、収入を得るための手段としてスポーツ施設の運営に携わってきた。第2のキャリアとして明示的に選択したわけでもなく、


企業や組織についての教育を体系的に受けたわけでもない。与えられた目先の仕事をこなしてきた彼らをいきなり組織運営の責任者に位置づけようとしても、意識の転換は難しかったのだ。
 最終的に何をしたいかという「自分探し」の途中で、組織に取り込まれ重要な役割を担わせられることに反発や戸惑いを感じる非正規社員は少なくない。非正規社員を店長など組織の責任者に登用する会社ではある程度共通した課題といえよう。
 人事部長W氏がまず取り組んだのは、このポストを契約社員の仕事と位置づけた理由を理解してもらうことだった。平易な言葉で粘り強く説明し、役割に対する納得感を高めていった。一方、スタッフの不平不満や顧客からのクレーム対応は本部の仕事と位置づけ、W氏自身が全国の施設を飛び回って対応し、店長は店舗の運営に専念できるようにした。
 次に着手したのが、契約店長の研修会である。集合研修の場で店舗運営のPDCA(計画-実行-評価-改善)の回し方や本部組織との役割分担、連携を学び、他店舗のベストプラクティスを共有した。「特に他店舗の取り組みを知る機会を設けたことは有効だった」とW氏は話す。他店舗と自店舗を比較した改善行動が見られるようになり、店長同士が切磋琢磨する関係が生まれた。「元スポーツ選手だけあって、競争にモチベーションを感じる傾向が強い。店長同士の健全な競争関係が出来上がることで、彼らにとって第2のキャリアである仕事の面白みがわかってきたようだ」
 店長同士のつながりは様々なアイデアを生んだ。自分の施設に予約が殺到した時に、近隣の施設に顧客を誘導する行動が起こり始め、エリアごとの店舗対抗試合が開かれるようになった。「契約社員はもともと正社員よりも本部や他店舗に接する機会が少なく、どうしても視野が狭くなり、発想が限られてしまう。組織の縦横のつながり作りを通じて、仕事そのものの深みや面白さを学んでもらうことが有効に働いた」とW氏は振り返る。