幸福観についての一考察

皆様、新年明けましておめでとうございます。2010年2月に始まったこのコラムも皆様のおかげでもうすぐ1年を迎えようとしています。今年もよろしくお願いいたします。
2011年が幸せな一年となることを祈って、今回のコラムは「幸福観」についてです。
昨年の秋に父が脳梗塞で倒れ救急車で運ばれました。この出来事は私の「幸福観」に大きな影響を与えました。
呼吸がスムーズにできる。食べ物を飲み込むことができる。自分の足で立って歩くことができる。体のどこにも痛みがない。
こういうことは当たり前のこととして今まで意識したこともありませんでした。しかし、実は脳からの指令が体の神経の隅々までちゃんと届き、体全体がひとつのシステムとして精巧に動いてくれて初めて実現する、素晴らしい現象なのです。
このことに気づかされてから興味深い現象が起こるようになりました。仕事や人間関係でうまくいかず、相手と口論している真っ只中でも、ふと自分が呼吸していることを感じて、「何はともあれ私は生きている」と幸せを感じるようになったのです。
このバスを逃したら会議に遅刻する、と必死の形相で走っているときも、ふと「両足が交互に地面を蹴る感触が気持ちいいな」と思うようになったのです。
父が脳梗塞で倒れたことは残念で悲しいことでしたが、そのおかげで家族の結束が強まり、父との時間を大切に過ごすようになり、今まで見過ごしてきた「幸せ」に気づくようになりました。まさに「禍福はあざなえる縄のごとし」ですね。
「幸せ」については、2010年12月16日号のエコノミストに面白い特集記事が載っておりました。その名もずばり「The joy of growing old」(年齢を重ねることの喜び)
http://www.economist.com/node/17722567
毎年新年を迎えるたびに「ああ、また年を取っていく。年は取りたくないものだ…」と複雑な心境になることがありますが、この特集記事は「人間は中年期以降により幸せを感じるようになってくる」と言っています。「幸せ」という曖昧模糊としたテーマについて、これだけ多くの学者が世界中で様々な統計を取って分析をしていること自体、私には驚きでした。様々なリサーチや統計データによると、年齢と幸福度には下記のグラフのような、U字型の相関関係が見られるというのです。
図1.JPG
年をとるにつれて幸福度が下がり、46歳前後で幸福度がUの底をつくと、それからは年をとるにつれて幸福度が上がっていきます。そしてこの現象はアメリカに限らず世界各国で見られるそうです。四十代後半から幸福度が上昇していく理由としては、年を取るにつれて自分の残り時間を意識するようになり、自分にとって本当に大切なことに集中できるようになる。「今、この瞬間」を満喫できるようになる。自分の長所、短所含めて、ありのままの自分を受け入れるようになる、といったことが挙げられていました。
もうひとつ、興味深いグラフをお見せしましょう。下記グラフは、世界各国の幸福度と裕福度(一人当たりGDP)の相関関係を表したものです。日本の一人当たりGDPは欧米諸国とほぼ同じですが、幸福度を見るとデンマークが8なのに対して日本は6と低くなっています。ブラジルの一人当たりGDPは日本よりもはるかに低いですが、幸福度は6.5と日本よりも高くなっています。
図2.JPG
日本の所得水準はブラジルよりもはるかに高く、欧米諸国と同じかそれ以上なのに、日本人の幸福度が低いのはなぜなのでしょう。エコノミストは文化的要因のせいかもしれないと書いています。皆さんはどう思いますか?
このコラムは異文化という大きなテーマの中で書いておりますので、国別のデータ比較などしていますが、日本人はどうなのか、アメリカ人はどうなのか、といった大きなくくりだけではなく、最後は「自分はどうなのか」と自分自身にひきつけて考えることが大切だと思います。
皆さんはどんな「幸福観」を持っていますか?
2011年が皆さんにとって幸せに満ちた一年となりますように。